女性で片側の足の付け根が痛む原因6つ|対処法や予防法も解説
- 真吾 保田
- 7 日前
- 読了時間: 8分

片側の足の付け根に痛みを感じるとき、その原因は筋肉や腱の炎症、関節の変形、神経の圧迫、あるいは婦人科系の病気など多岐にわたります。特に女性の場合、妊娠・出産や月経周期との関係が影響しているケースも見られ、症状を放置すると慢性化や悪化を招くおそれもあります。
当記事では、考えられる原因別に症状の特徴から、適切な診療科や治療法、日常でできる予防策まで紹介します。痛みの原因に心当たりがある方は、早めの対応を心がけましょう。
【この記事はこんな方におすすめです】 ・片側の足の付け根に違和感や痛みを感じている女性 ・痛みの原因が股関節か、それ以外か判断がつかず困っている方 ・どの診療科を受診すべきか判断に迷っている方 |
女性で片側の足の付け根が痛む原因とは

足の付け根に痛みを感じるとき、その多くは股関節に関係している可能性があります。股関節は歩く、立つ、座るといった基本動作を支える重要な関節です。まずはその役割を知り、原因を正しく見極めて適切に対処することが大切です。
以下では、女性で片側の足の付け根が痛い場合に考えられる原因を紹介します。
筋肉や腱の使いすぎによる炎症
片側の足の付け根に痛みが生じる原因として、股関節周辺の筋肉や腱の使いすぎによる炎症がよく見られます。特に腸腰筋や大腿筋膜張筋などは、立ち仕事や長時間の歩行、または急激な運動によって過度に緊張し、炎症を起こしやすい部位です。腸腰筋炎や大腿筋膜張筋炎と呼ばれるこれらの炎症は、筋肉が骨に付着している部分などに負担が集中することで発生します。
症状としては、股関節を曲げたり脚を動かしたときに足の付け根付近に鋭い痛みを感じるのが特徴で、日常動作にも支障をきたすことがあります。片側のみで症状が現れる場合には、動作の偏りや特定の姿勢による負担が背景にあることも考えられます。
関節の変形や摩擦
片側の足の付け根に痛みがある場合、関節の変形や摩擦による影響も考えられます。代表的な疾患として挙げられるのが「変形性股関節症」です。変形性股関節症は、股関節の軟骨が加齢や長年の負担により徐々にすり減ることで発症します。
軟骨が薄くなると、関節を構成する骨同士が直接擦れ合い、炎症や痛みを引き起こします。初期には立ち上がりや歩き始めに違和感を覚える程度ですが、進行すると常に痛みを感じるようになり、可動域も制限されます。女性に多くみられ、左右どちらか一方に症状が出やすい疾患です。
自己免疫の異常による炎症
足の付け根の痛みの原因として、自己免疫の異常による炎症も挙げられます。自己免疫の異常による炎症の中でも代表的なのが関節リウマチです。関節リウマチは、本来は外敵から体を守る免疫機能が誤作動を起こし、自身の関節を攻撃してしまう慢性炎症性疾患です。股関節にリウマチ性の炎症が起こると、滑膜という関節を包む組織が腫れ、痛みやこわばり、関節の破壊が徐々に進行していきます。
両側に症状が出ることが多い一方で、発症初期には片側だけに痛みが現れることもあります。女性に多く発症し、30代~50代での発症が比較的多いとされています。炎症は進行性であるため、早期の発見が重要です。
腰のトラブルによる関連痛
足の付け根に感じる痛みは、股関節そのものではなく、腰部のトラブルによって生じる「関連痛」である場合もあります。代表的なものが坐骨神経痛です。坐骨神経痛は、腰椎の椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などにより、腰椎や骨盤まわりの神経が圧迫されることで発症します。圧迫された神経が支配する範囲に痛みや痺れが広がるため、股関節周辺や太ももの前側、側面に痛みが現れることがあります。
特に片側のみに痛みが出るケースが多く、長時間同じ姿勢を取った後や、前かがみ、腰をひねる動作などで症状が悪化しやすい傾向があります。神経性の痛みは股関節の炎症と異なり、範囲が広く鋭い痛みとなることが特徴です。
子宮や卵巣の病気による関連痛
女性特有の内臓疾患によって、足の付け根や股関節付近に痛みが生じることがあります。特に、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの婦人科疾患が原因となる「関連痛」は見過ごされやすく注意が必要です。子宮筋腫や卵巣嚢腫は子宮や卵巣の腫れや変形によって周囲の神経や骨盤内の組織が圧迫され、下腹部だけでなく足の付け根や鼠径部、さらには太ももにまで痛みや重だるさを感じることがあります。
左右どちらかの卵巣や子宮側に症状が偏ることがあり、片側の股関節痛として現れる場合もあります。月経に伴う痛みの悪化や下腹部の張りなどの症状を伴うことが多く、股関節や脚の不調と婦人科疾患が関係しているケースも少なくありません。
妊娠や出産による骨盤の歪み・腹圧の増加
妊娠や出産は、女性の体に大きな変化をもたらします。その中でも骨盤まわりへの影響は大きく、出産を経た後は骨盤が開いた状態になり、関節や靭帯が緩みやすくなることで不安定さが残ることがあります。この骨盤の歪みや左右差が原因となって、片側の股関節に痛みや違和感を覚えるケースがあります。
また、妊娠中は胎児の成長とともに腹圧が高まり、これにより鼠径部に負担がかかることもあります。腹圧の増加によって鼠径ヘルニアが発症する可能性もあり、足の付け根の痛みとして現れることがあります。骨盤の歪みや腹圧の増加による症状は産後しばらくしてから出ることもあるため、経過を見ながら慎重に判断する必要があります。
女性で片側の足の付け根が痛む際には何科に受診すべき?
片側の足の付け根に痛みがある場合、まずは整形外科の受診を検討するのが一般的です。筋肉や関節、神経など運動器に関する原因が多いため、レントゲンやMRIなどの画像検査で原因を特定できる可能性があります。特に、痛みが2週間以上続いている場合や、歩行・立ち座りなど日常生活に支障がある場合には、早めの受診が推奨されます。
一方で、月経周期と痛みが連動している場合や、性交時に痛みや出血を伴う場合、妊娠・出産歴があり骨盤まわりに違和感がある場合などは、婦人科系の疾患が関係している可能性もあります。その場合は、整形外科だけでなく婦人科の受診も視野に入れる必要があります。
痛みの原因は一つに限らないこともあるため、気になる症状が複数ある場合は、医師の判断を仰いで適切な診療科で検査を受けましょう。
女性で片側の足の付け根が痛む際の対処法

足の付け根に片側だけ痛みがある場合、その原因によって対処法は大きく異なります。まずは保存的な治療から始め、効果が見られない場合は再生医療や手術療法が検討されることがあります。以下に代表的な対処法をジャンルごとにまとめました。
分類 | 対処法の名称 | 内容と特徴 |
保存療法 | 安静・冷却・温熱療法 | 痛みのある部位を安静にし、炎症が強い時期には冷却、それ以降は血流促進のため温熱を行う。 |
ストレッチ・リハビリ | 股関節周囲の筋肉の柔軟性を高め、筋力をつけて痛みを軽減。理学療法士の指導のもとで行う。 | |
痛み止め・消炎剤の服用 | 消炎鎮痛剤で炎症を抑え、痛みを緩和する。症状の軽減が目的で根本治療ではない。 | |
再生医療 | 血液成分を使った注射治療 | 自分の血液から成分(PRPなど)を抽出し患部に注射する。自然治癒力を高め、炎症や痛みを軽減する。 |
自己細胞を使った治療 | 自身の幹細胞などを用いて損傷部位の回復を促す治療法。高度な技術が必要で保険適用外が多い。 | |
手術療法 | 人工股関節置換術 | 関節の変形が進み、保存療法で改善しない場合に適用。関節を人工物に置換して痛みを改善する。 |
関節鏡視下手術 | 軽度の損傷や炎症に対して実施される負担の少ない手術。回復が早く、入院期間も比較的短い。 |
症状の重さや原因に応じて、適切な治療を選ぶことが大切です。まずは整形外科など専門機関で診断を受け、医師と相談しながら無理のない治療を検討しましょう。
女性で片側の足の付け根が痛む際の予防法
足の付け根の痛みは、日常のちょっとした習慣や心がけによって予防できるケースも多くあります。股関節は日常的に大きな負荷がかかるため、筋肉や関節を守るためのケアが重要です。
以下に、股関節まわりのトラブルを防ぐための主な予防法をまとめました。
■ストレッチ
股関節まわりの筋肉(腸腰筋や大腿筋膜張筋など)を柔軟に保つことが、痛みの予防につながります。無理のない範囲で太ももや腰を伸ばすストレッチを継続することが大切です。特に運動前後や入浴後の習慣にすると効果的です。
■適度な運動
ウォーキングや軽いスクワットなどで股関節を支える筋肉を強化しましょう。筋力を維持することで、関節への負担を軽減できます。急激な運動ではなく、継続できる内容を選ぶことがポイントです。
■冷え対策
股関節は冷えると血流が悪くなり、筋肉の緊張や痛みにつながる場合があります。特に下半身の冷えに注意し、腹巻きやレッグウォーマーなどを活用して温かさを保つようにしましょう。
■姿勢の見直し
長時間の片足重心、足を組む癖、前かがみの姿勢などは股関節に偏った負荷をかけます。立ち方や座り方の癖を意識し、骨盤の傾きを整えるよう心がけましょう。
■体重管理
体重が増えると股関節への負荷も増します。バランスのよい食事と適度な運動によって適正体重を維持することが、股関節の健康を守るために重要です。
まとめ
女性で片側の足の付け根に痛みがある場合、その多くは股関節に関するトラブルが原因であると考えられます。股関節は歩行や立ち座りといった基本動作に深く関わるため、筋肉や腱の炎症、変形性股関節症、関節リウマチといった疾患の影響を受けやすい部位です。また、腰部の神経圧迫による関連痛や、子宮筋腫・卵巣嚢腫など婦人科系の病気、妊娠や出産後の骨盤の歪みも片側の痛みを引き起こす要因となります。
整形外科や婦人科での早期診断が重要で、保存療法、再生医療、手術療法などの選択肢があり、症状に応じた対応が必要です。予防には、股関節の柔軟性を保つストレッチ、冷え対策、適度な運動や体重管理などを意識して行いましょう。