培養幹細胞治療

幹細胞(Stem Cell)とは
ノーベル賞の受賞理由となったiPS細胞が、まさに代表的な幹細胞です。
幹細胞は、自分と全く同じ細胞を作る能力(自己複製能)と私たちの体をつくるさまざまな細胞に分化する能力(多分化能)を持つ特殊な細胞です。この2つの能力のおかげで、1個の受精卵から始まって、複雑で高度の機能をもった人体を作ることが可能となります。幹細胞はその由来や性質からいくつかに分類されており、ES細胞、iPS細胞、成体幹細胞に分けられます。ES細胞、iPS細胞は人工的に作られた細胞で、成体幹細胞は私たちの体に存在する細胞です。
ES細胞(Embryonic Stem Cell 胚性幹細胞)
受精卵が数回分裂したあと、100個ほどの細胞のかたまり(内部細胞塊)となります。この内部細胞塊より分離され、株化された細胞がES細胞です。ES細胞はすべての細胞(組織)への分化能を有する万能細胞で、クローンマウスの作製に応用されています。
iPS細胞(induced Pluripotent Stem Cell)
iPS細胞は、2006年に京都大学の山中教授により作製された万能細胞です。マウスの線維芽細胞にウイルスベクターを用いて4つの遺伝子(Oct3/4, Flk1, Sox2, c-Myc)導入することで、人工的にES細胞と同じ性質をもった多能性幹細胞が樹立されました。翌2007年にはヒトの細胞を用いて iPS細胞の作製に成功し、再生医療への応用研究が盛んにおこなわれるようになりました。iPS細胞は外部から遺伝子を導入しており、細胞が癌化する可能性があるため、実用化には時間を要しています。
成体幹細胞(Tissue Stem Cell)
成体幹細胞は、私たちのすでに私たちの体の中に存在している、ある程度の多分化能を持った細胞です。発生過程や、損傷した組織が再生する過程で、新しい細胞を供給する役割を持つと考えられています。ES細胞や iPS細胞に比べると、成体幹細胞の持つ多分化能は限定されると考えられていますが、自分自身のの幹細胞を治療に用いることができることから、安全性が高いと考えられており、実用化が早く、多くの臨床応用が進められています。
成体幹細胞としては、脂肪由来幹細胞、骨髄由来幹細胞、皮膚由来幹細胞、歯髄由来幹細胞、臍帯血由来幹細胞が特に研究されており、当院では脂肪由来幹細胞を用いて、関節痛の治療をおこなっています。
培養幹細胞治療(関節治療)
脂肪(由来)幹細胞を応用した関節治療です。関節内の損傷した組織を幹細胞が修復し、痛みを軽減します。最先端の再生医療であり、根本的な治療として期待されています。
当院では、膝関節・肩関節・股関節・肘・手・足などの変形性関節症、関節痛に対し、脂肪幹細胞を用いて治療を行います。痛み、腫れ、こわばりなど様々な症状を引き起こしている関節に、脂肪から取り出した幹細胞を培養して増やした後、関節への注入治療を行います。この「幹細胞」は、体内の損傷がある部位を探し当てて付着し、炎症を抑えると共に、損傷した組織を修復する働きがあると言われています。ご自身の体から取り出した幹細胞を培養し、増やしてから体に戻す治療が培養幹細胞治療です。
幹細胞治療の流れ
①初診
問診、診察、MRI画像診断で医師が膝の状態を詳細に確認し、治療について説明します。また感染症などの血液検査を行います。
②脂肪組織を採取
腹部もしくは大腿部に局所麻酔後、皮膚を約5mm程度切開し、少量の脂肪組織を採取します。細胞の培養に必要な採血も行います。所要時間は20分程度です。
③細胞培養
細胞培養加工室(CPC)で4-6週間かけて治療に必要な数まで幹細胞を増やします。
④関節へ注入
治療に必要な数に増やした幹細胞を関節内に投与します。
残った細胞は凍結保管します。必要な時に取り出して、治療を繰り返すことが可能です。
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培養幹細胞治療はこのような方におすすめです
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慢性的に強い膝の痛みがあり、日常生活に支障が出ている方
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ヒアルロン酸やステロイド注射などの保存療法が効かなくなってきた方
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手術や入院は避けたい、または難しい方
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一般的な保険診療を受けてきたが限界を感じる方
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再生医療などの新しい治療法に興味がある方

対象となる疾患
運動器疾患
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変形性の関節症
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靭帯損傷
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椎間板変性
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足底腱膜炎 など
神経・循環器疾患
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脳卒中後遺症
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脊髄損傷
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パーキンソン病
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心筋梗塞 など
内臓疾患
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糖尿病
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肝臓疾患
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腎臓疾患 など
培養幹細胞治療のメリット・デメリット
メリット
長期的な改善効果が期待できる
炎症・痛みの軽減に対し、ヒアルロン酸やステロイド注射のような一時的な効果ではなく、長期的な効果が期待できます。
軟骨破壊を抑制できる
変形性膝関節症では、軟骨の擦り減りや関節の変形が進みます。これまで対処法のなかった軟骨擦り減り・関節変形ですが、培養幹細胞治療では軟骨・関節の保護作用が期待できます。
安全性が高い
自身の脂肪由来の幹細胞を用いた治療のため、拒絶反応やアレルギーのリスクが非常に低くなります。
入院せず治療できる
入院やメスを使った処置は不要です。腹部などから脂肪を採取し、加工した後に患部に注射するのみなので、負担の少ない治療法です。
デメリット
即効性がない
痛み止めやヒアル ロン酸注射などで見られる即効性は期待できません。
効果の出方に個人差がある
重症度などにより、効果の出方には個人差があります。一般的に使用する薬ほどの効果の安定性はございません。
肺塞栓症のリスクがある(幹細胞点滴の場合)
幹細胞点滴の留意べき副作用として、肺塞栓症があります。関節への幹細胞注入の場合は、肺塞栓症のリスクはありません。
この副作用は、品質の良くない幹細胞を注入した場合や大量の幹細胞を注入した場合に起こる可能性があると言われています。
当院では、細心の注意を払い、安全性を最優先した治療を行います。
治療後の注意点
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日常生活動作は治療後当日から可能です。
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治療当日は飲酒、および入浴はお控えください。(シャワー浴は可)
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治療後2〜3日は、腫れが悪化する可能性があるため、激しい運動や過度なマッサージはお控えください。
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安静にしすぎると関節が硬くなることがあるため、膝を曲げ伸ばしするなどの軽い運動は積極的に行ってください。
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一時的な痛みや腫れが数日続く場合があります。内出血やむくみが現れることもありますが、通常1ヶ月ほどで治まります。
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非常に稀ではありますが、注入時には感染や関節内出血、注入後には脂肪塞栓を合併するリスクがあります。
注入部位に強い痛みや感染の兆候が見られた場合は、速やかに担当医師に相談してください。
培養幹細胞治療の費用
培養幹細胞治療は保険外診療です。当院では以下の通りに価格を設定しております。
疾患・症状によって複数回の治療が望ましい場合もありますので、詳しくは、診察時に担当医にお問い合わせください。
細胞数1億個以上
片膝 660,000円
両膝 770,000円
点滴 880,000円
価格は全て税込価格です。
培養幹細胞治療のよくある質問
ー ひざ以外も治療ができますか。
当院では膝関節の他に、股関節、足関節、肩関節、肘関節、手関節の治療をおこなっています。
また、慢性疼痛に対して、培養幹細胞の点滴投与をおこなっています。
その他の部位も治療可能な場合があります。お問い合わせください。
ー 培養幹細胞治療は手術や入院が伴いますか。
入院の必要はありません。予約制の日帰り治療です。仕事や日常生活は通常どおり可能です。
ー 培養幹細胞治療に関して副作用はありますか。
一時的な痛みや腫れが数日続く場合があります。内出血やむくみが現れることもありますが、通常1ヶ月ほどで治ります。
また、留意べき副作用として肺塞栓症があり、注入した幹細胞が肺の血管で詰まった場合に発症します。酸素の吸収・二酸化炭素の排出機能が障害され、最悪の場合には命を落とします。この副作用は、品質の良くない幹細胞を注入した場合や大量の幹細胞を注入した場合に起こる可能性があると言われています。当院では、細心の注意を払い、安全性を最優先した治療を行います。
ー 人工関節手術を他院ですすめられましたが、培養幹細胞治療を受けることは可能でしょうか。
可能です。最適な治療法について説明しますので、一度ご相談ください。
ー 培養幹細胞治療の効果が出るまではどれくらいかかりますか。
症状の原因により異なり、また個人差もみられます。
一般的には、炎症による痛みは約1週間後から、関節変形による症状は早くて1ヶ月後から効果がみられ、
1年以上かけて少しずつに改善していきます。
ー 初診時に必要なものを教えてください。
保険証をお持ちください。
必須ではありませんが、MRI画像やレントゲン画像を、お持ちでしたらご持参ください。
ー 培養幹細胞治療に年齢制限はありますか。
培養幹細胞治療に年齢制限はありません。高齢の方も受けて頂けます。
未成年の方は、保護者の方の同意があれば治療可能です。
ー 他院で治療中の病気がありますが治療は可能ですか。
ほとんどの場合治療可能ですが、一度ご相談ください。
ー 医療費控除の対象となりますか。
対象となります。領収書を必要時まで保管ください。
還付金は個人により異なりますので、詳しくは税務署にご相談ください。